相棒と言うのは車の事です

今から6年前。
高校卒業と同時に運転免許を取得しました。
ちょうど当時、母親が車を持て余していたのと駐車場代を浮かすために、
僕が「母親名義で乗る」形で車をもらいました。

ダイハツのマックスと言う、真っ赤な軽自動車でした。

その車は軽自動車の規格が変更された直後の車で、
今まで街中を走っていた軽自動車とは、また違う車でした。

余談ですが、僕が生まれてから両親が乗っている車は
父がランドクルーザー70で、母がジムニーワイルドウィンドー
ガチガチのオフ車でした。

なのに、急に街乗り車に変えた母。
理由は明確
「ジムニーに飽きたから」
飽きたからと言ってましたが、
エンジンが壊れるまで乗り潰していました。

タイミングよく車をもらった僕。
当分の間は「自分の車がある」と言うテンションで
毎日のように運転し、毎日が新鮮でした。

しかし、そんな新鮮さも長く続くわけもなく、
色々と不満が出始めました。
先にも述べたように、僕は生れた時から
オフ車で育ってきました。
遊びに行くのも、街よりも山や海です。
そんな僕が、前輪駆動の軽四に満足行くはずがありません。
「なんでジムニーを買わへんかったんや」
「なんでMT車やないんや」
などと、母親に尋ねたこともありました。

そんなある日。
僕は大学のある町で独り暮らしをすることを決めました。
保育士になるために集中したいがためでした。
（結果としてはピアノに付いていくことができずリタイア）
マックスの後部座席を倒し、つめるだけのものを積み。
父の車も使い、一路アパートへ。
忘れもしない1/22。

大学では、たくさんの友人が出来ました。

3回生にあがる直前のある日。
テスト期間だった僕は、息抜きに友人Kと海に行くことにしました。

当時の僕達は海岸で缶コーヒーを飲みながら
恋愛話や馬鹿げた話に花を咲かすことを
一番の娯楽としていました。

突然Kが
「ここの海にも飽きたな。べつの海にいこか！」
と提案してきました。
もちろん僕も即答でOK。
僕の運転で「見知らぬ海」を目指して出発です。

「気が付いたら日本海かもなぁ！」とK。
「あほちゃうけ？いや、あるかもなー」
「次曲がるん？」
「いや知らんで？まっすぐいこや！」

もちろんナビ付きの車ですが
交差点と言う交差点はすべて直進する
変なルールに基づき海を目指します。

岡山の県道9号線だったか？
を走っていると、どんどんと雪深くなってきます。

もちろん金のない僕は
ノーマルタイヤ

進むにつれ雪はアイスバーンになり
車体は不安定になり始めました。

振り返れば「ただ危険」なドライブでしたが
当時の僕達は、そんな危険がタダのスパイスでした。

気が付けば鳥取県。

僕達は本当に日本海に来てしまいました。

二人で夜を明かし、
曇り空に日の出を隠され
白兎海岸の道の駅で朝定食を食べ
また、大学のある街へ・・・

そんな無茶もしました。

後にも先にも、大学時代に一番無理したのはこの時だけでした。

アパートを引き揚げるときも荷物を満載にし、
すでに搭載していたジェットバックにも荷物を詰めて
引き揚げた時も・・・

引き揚げてから卒業まで、
ほぼ毎日往復100ｋを走った時も。

釣り具を満載にして愛媛に遠征した時も。

660ｃｃの真っ赤な相棒は頑張ってくれました。

本当によく頑張ってくれました

気が付けば走行距離は14万Ｋを超えていました。
もらった時は確か６万Kも走ってなかったように記憶しています。

そんな８万キロの思い出を積んだ相棒と
今日、別れてきました。

次の車と車庫を入れ替えた時。
少しさみしい気持ちになりました。

次の車は2500cc

マックスは660cc

マックスを見送るとき、父がぼそっと

「去って行くな」

と言いました。

普段ならキリッとしているテールランプが
少し寂しげなようにも見えました。

マックスは知人の親御さんのもとに
旅立って行きました。

車　

と言う、僕らを運ぶための道具に
ここまで愛着をもつのはおかしいかもしれないですが、
僕は昔から
ランドクルーザー70のグリルに父を映し
ジムニーのグリルに母を映してきました。

ゆっくりと余生を過ごしてほしいものです。

今まで本当にありがとう。

僕にドライブの楽しさを教えてくれたマックス。

ひねくれずに次のご主人様の為に頑張れよ！